公務員における通勤手当とは(何が根拠に?どんなルールで?)

通勤手当

 

公務員のための給与関係の説明をしていきたいと思います。
(過去の自治体では自身が公務員でありながら、自分の給与詳細を知らなかった人が意外と多かったです。。。)
今回は、“通勤手当” についてです。

 

なお、この解説は国家公務員が順守する人事院規則や各自治体の地方公務員が順守する条例等に基づいて考察されています。

通勤手当とは何?

電車

 

通勤手当は、通勤のために交通機関等を利用して運賃等の負担と常例とする職員や、自転車等交通用具の使用を常例とする職員に対して、通勤に要する経費を補助するために支給される生活給的な手当となります。

<交通用具とは>

  • 国家公務員の場合:自動車、その他の原動機付の交通用具、自転車
  • 地方公務員の場合:自転車、原動機付自転車、舟艇及び自動車、人事委員会が特に承認する交通の用具

※この中に入っていないスケートボード、キックボードやセグウェイ等は現在はあまり認められていませんが、それが社会通例上で通勤方法として認められてくると今後許可されるようになるかもしれません。

 

つまり、電車やバスなどの公共交通機関を利用しているか自転車やバイクや自動車などを使用して通勤している職員に対して、その交通費にあたる経費が支給されます。

 

なお、この手当は実費弁償に近い性格を有しているため、所得税法上一定額が非課税として取り扱われます。

つまり、簡単に言うと通勤手当は月15万円までは税金が引かれませんので、当人の所得額に算入されません。

 

通勤手当は何できまっている?

法律

 

 地方公務員の場合

“条例”、”規則”、”規程”、”要綱”等で決まっています。

 

例えば東京都で言うと、“職員の給与に関する条例”、”職員の通勤手当に関する規則”、”通勤手当支給規程” などが支給における根拠となります。(各自治体により条例等の正式名称が少し違ってきます。)

<対象の法律等>

 

 国家公務員の場合

“一般職の職員の給与に関する法律”、”人事院規則”で決まっています。

<対象の法律等>

 

主に以下の内容が上記の法律や条例等で決まっています。

  • 支給要件(どういった場合に支給するか)
  • 支給対象期間や支給金額
  • 通勤届の届出方法
  • 支給するための条件

 

大きいルールが法律や条例で決まっていて、細かなルールになればなるほど人事院規則や規則→規程→要綱で決まってきます。

 

通勤手当支給の要件は?

交通機関

 

原則としては、通勤距離が2km以上であって、交通機関等を利用している職員か交通用具を使用している職員が支給の対象となります。

(※自治体よって距離が異なる場合がありますので。その自治体の規則等を確認してみてください。)

 

しかし、例外として2km未満でも下記の条件にあてはまっている場合は支給されます。

  • 住居又は勤務庁が離島にある場合
  • 身体障害者のため歩行が著しく困難な場合
  • 住居から勤務庁までの経路で、経済的かつ合理的と認められる交通機関等の長さが片道1km以上ある場合

 

 通勤経路や通勤方法の要件

通勤経路は、職員の住居から勤務庁までに至る最短の経路により測定する必要があります。

そして、通勤経路と方法は運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法にしなければなりません。

 

なお、最も経済的かつ合理的とはどういうこと?と思われる方は下の内容を確認ください。

(参考サイト:通勤手当における最も”経済的かつ合理的”と認められる経路や方法とは

 

また意外と知られていないのが、通勤の往路と復路において別々の経路にしたり、別々の方法で通勤するようにしてはいけません

なので、下記のように行きと帰りで異なる通勤経路や方法で通うことは禁止されています。

 

①行きはA路線で向かうが、帰りはB路線を使う。

②行きは電車を使って行くが帰りは徒歩にする。

 

ただし、例外的に勤務時間が深夜に及ぶことによって電車が終電を終えている等の正当な事由がある場合は、行きと帰りで異なった通勤経路、方法で申請することは可能です。

 

支給対象期間や支給金額は?

支給期間と支給金額

支給の対象期間は?

原則として、4/1~9/30 までか 10/1から3/31 までの6か月分を一括で支給します。

そのため、定期券で支給する場合は基本的には6か月定期で支給します。

 

しかし、将来的に変更することがわかっている場合や中途で通勤経路等の変更があった場合などは、下の表での定期券ごとで分けて支給します。

 

支給月数 期間と定期券の組み合わせ
6月分 6か月 の定期券
5月分 3か月+1か月+1か月 の定期券
4月分 3か月+1か月 の定期券
3月分 3か月 の定期券
2月分 1か月+1か月 の定期券
1月分 3か月 の定期券

 

例えば、6月の中旬に引っ越すことがわかっている場合は、4月の時点で4月、5月、6月の3か月分で支給をして、引っ越しが終わってからの7月、8月、9月の3か月分は今後支給します。

 

支給開始はいつからになる?

規則等でよくある書き方だと「新しく要件を具備した日の属する月の翌月」から支給します。

<新しく要件を具備した日の属する月の翌月とは>

  • 新しく要件を具備:住居が移ったり、勤務庁が変更されて(異動があって)通勤経路や金額に変更があること。
  • 属する月:その日がある月のこと。 例)7/20に引っ越した場合は、属する月は7月になります。

※新しく要件を具備した日が、月の初日の場合は、その日の属する月から支給します。

 

つまり、引っ越しした日や異動によって出勤先が変わった日の翌月分(初日の場合はその月分)から通勤手当は支給されます。

 

他にも「要件を具備した日」の考え方は、採用された場合は “採用発令日”、住居を移した場合は “転居した日”、所属を異にした場合は “異動発令日” となります。

 

ここで気を付ける点としては、“転居した日” は住民票を移した日(住民登録した日)でなく、実際に引っ越した日を指します。

 

なお、「月の初日にその職場にいないと支給されない」ことになるので、あまりないですが月の途中に採用された場合(採用発令日が月の途中)は、その月分は通勤手当は支給されず翌月分から支給されることになります。

 

支給金額は?

交通機関等を利用して通勤している職員と、交通用具を使用して通勤している職員と、その両方を利用している職員に対して通勤手当が支給されます。

 

また支給の基準日はその月の初日(4月分から支給の場合は、4/1時点の交通料金等)で考えます。

 

交通機関等を利用している職員の場合

交通機関等の利用者は、電車やバスを利用した際の実際にかかっている運賃等の金額となります。

 

つまり、利用している電車やバスの区間で購入している定期券や回数乗車券の代金となります。

 

定期券代は検索すれば一発で定期券代が出てくるので分かりやすいですが、回数乗車券などは鉄道会社によって独自の割引を行っている場合もあるためどのように計算するか複雑な場合があります。

 

回数乗車券の計算方法としては、割引率を割り出して通勤所要回数をかけて計算すれば良いです。

 

例えば、小田急線を利用している方は「小田急チケット10」というものがあり、それを利用する場合は10枚分を1,150円で購入できます。

(参考:「小田急チケット10」3種を 2020年4月1日(水)から発売

 

そのチケットを利用する職員で、普通旅客運賃が130円の区間を利用していて、月の通勤所要回数が12回であった場合

 

 回数乗車券利用時の計算方法

1150円 ÷ 10 = 115円 となるので、片道の通勤所要料金は “115円” となります。

 

それが通勤所要回数が12回なので、往復分を考えると×2となり、24回となります。

 

そのため、ひと月の通勤手当金額としては、115円 × 24 = 2,760円 となります。

6か月分の支給となると単純に 2,760円 × 6= 16,560円となります。

 

また、通勤手当の上限金額は月に55,000円までとなるため、55,000円以上の溢れる分は本人の負担になります。

 

新幹線等の特別料金が必要な電車などを使用する場合は、規定等で定められている少し高めなハードルをクリアしないと特別料金はでません。

そしてその高めなハードルをクリアした場合も、新幹線の特別料金の2分の1の金額しか支給されない場合が多いです。

 

交通用具を使用している職員の場合

交通用具等の使用者は、距離に応じて支給金額(国家公務員の場合は 2,000円~31,600円)が変わります。

地方公務員の場合でも若干誤差がありますが、国家公務員と同程度の距離と金額の関係になっていると思います。

国家公務員における使用距離と支給金額

国家公務員の場合:

交通用具の使用距離 支給金額
2km以上~5km未満 2,000円
5km以上~10km未満 4,200円
10km以上~15km未満 7,100円
15km以上~20km未満 10,000円
20km以上~25km未満 12,900円
25km以上~30km未満 15,800円
30km以上~35km未満 18,700円
35km以上~40km未満 21,600円
40km以上~45km未満 24,400円
45km以上~50km未満 26,200円
50km以上~55km未満 28,000円
55km以上~60km未満 29,800円
60km以上 31,600円

 

また、1か月当たりの通勤所要回数が10回に満たない場合は、通常の支給金額の半分の割合(50/100の割合)で交通用具代を支給します。

 

払い戻しをする場合

支給対象の月に、その職員が、出張、休暇、欠勤などの理由で一度も出勤しなかった場合は、その月の通勤手当は払われません

 

なので、病気休暇がずっと続いてしまったり、今ならテレワークのため一度も出勤行為がなかった場合は、その月の通勤手当を払い戻さないといけません。

 

ここで言う、「出勤」とは「仕事をするための通勤行為」を意味するので、

例えば辞令交付のために職場に行ったり、書類を貰いに行くだけとかの場合は仕事ではないよね。と考えられて「通勤」と認められず通勤手当が支給されない可能性があります。

 

逆に言えば、一度でも出勤すればその月の通勤手当は満額支給されます。

 

また、休職や育児休業などで休んだ場合は、日割を行うこともあります。

しかし、これは自治体によっては満額支給したり、日割りにしたりと扱いがまちまちなようなので、その自治体の規則等を確認する必要があります。

 

他に気を付けるべきポイント

注意点

購入ルールがない?

実は、通勤手当に関する条例等は通勤手当を支給するための金額や要件などのルールが定められていますが、支給された通勤手当でどのように定期券等を購入するかのルールはその条例等で定められていません

 

これによって起こる弊害として、例えば消費税が4月1日に5%から8%に変更された場合は、支給金額は4月1日時点の消費税8%の運賃で計算された通勤手当が職員に支給されます。

 

しかし、定期券等の購入タイミングとしては、3月中に購入しようが4月以降に購入しようがどちらでも問題ありません

これは、職員に通勤手当を支給するルールについては条例等で定められていますが、買い方については定められていないからです。

 

それによって、3月中に購入した場合は消費税の差率3%分を浮かせて購入することが可能になるのです。

これについては、不正受給などにも該当しません。あくまで職員のモラルに任せる程度のことしか言えません。

(参考:国家公務員の定期代、3月購入でも「8%」分支給(※2014年記事)

 

通勤方法のルールがない?
Qくん
Qくん
あれ?でも上で通勤経路や通勤方法の要件を説明してませんでした?
その通り、説明してたね。でも、よく見てほしいんだけど、あそこは実は通勤手当支給における要件について説明していたんだ。

Aさん
Aさん
Qくん
Qくん
ほら、説明していましたよね。
・・・え、どういうことですか?
では、支給されなくてもいいから、この経路や方法で通いたいと思ったら?
Aさん
Aさん
Qくん
Qくん
あ、なるほどですね!
通勤手当を支給するためのルールとしては定まっているけど、支給されない場合の通勤ルールは書いてないんですね!

 

例えば、通勤で 1.5 kmの距離を自転車で通いたい場合、、、

でも自転車を使用する距離が 1.5 kmであるため、交通用具代金が支払われない

 

お金はいらないから!歩きたくないから自転車で通勤したい!という場合どうだろうか?

実は、これに関しては、交通用具を使用してはダメというルールは通勤手当関係の条例等で定められていない。

 

正解は、自転車を使用することは問題ない。しかし所属長が承認する場合による

ということになる。

 

極端に言ってしまうと、どのように通勤手当支給に関するルールはあるが、実際にどのように通勤すればよいかの明確なルールは定められていません。

 

まとめ

公務員の通勤手当について、基本的なことを解説しました。

 

人事院規則やいくつかの自治体の条例等を基に執筆していますので、基本的にはどこの自治体もこの内容と同等になっているかと思います。

 

各自治体の条例や規則、規程などをよく見ていただければ、解説したほとんどのことが記載されています。

 

しかし、条例、規則、規程に載っていないもっと細かな部分として、要綱や内部のルールが適用されていることもあります。

更に細かな部分として、法令上の解釈等に関して知りたい場合は、以下の本が参考になるかと思います。

 

(複雑な公務員の諸手当の支給実務に際して生ずる法規上の疑問、諸問題をQ&Aでわかりやすく解説されています。)

 

また、場合によっては、各自治体の立地条件などによってルールが異なる可能性がありますので、条例等や内部資料を確認して正確に把握していただけたらと思います。

 

Follow me!

公務員における通勤手当とは(何が根拠に?どんなルールで?)” に対して6件のコメントがあります。

  1. えれく より:

    国家公務員です。
    通勤手当に関する証明としてSuicaの履歴の定期的な検認が有ります。
    たまに現金で出勤する事がありSuicaに履歴が残ってない事から、横領だと言われ40万近い額の支払いを命ぜられ支払いました。

  2. RH より:

    管理人のRHです。以下長文ですいません。
    通勤手当としては、基本的には届け出ている通勤方法や手段、経路で通勤することが必要になりますが、場合によっては、届出ている手段や方法以外で通勤行為をすることは生活していたら普通は起こります。(例えば、Suicaを忘れたから現金で払うとか、用事があって帰り道で通勤経路とは別の路線の駅で降りる必要がある等です。)
    なので、たまにはSuica現金で払っていたり、別のルートを行くことは問題ないと思います。
    問題があるとしたら、その頻度です。
    通常は届け出ている通勤方法等で過半数(半分以上)の通勤行為をしないといけないのですが、今回で言うとSuicaでの履歴が過半数に満ちていない場合は、届け出通り過半数以上通勤していないとみられて問題になる可能性があります。
    そういった事情から、今回は不正を疑われて、実際に不正していたと思われる期間での通勤手当代金の返金を求められたのだと思います。

    状況を推測しての回答になるので、誤っていたら申し訳ありません。

  3. NS より:

    代替職員の契約が○月1日から、何故か1月3日日曜日までの契約。
    1月4日月曜日から任期付職員の契約に切り替わったら、1月1日からの契約ではないから1月は交通費はありませんとのこと。
    実質4日月曜日が初日でも1月は丸々交通費が支給されません。

    1. RH より:

      管理人のRHです。以下またまた長文で失礼します。

      1月4日から任期付職員の契約となるとのことで、新しく要件を具備した日は”1/4″になると考えられます。
      その場合は属する月(1月)の翌月である2月分から支給されることになります。これは制度上はそうなっており、正月だろう祝日だろうが関係がなく、現状では仕方がないことかと思います。
      しかし、初出勤日が”1/4″になるが、契約の切り替わり日(≒採用日)が”1/1″である等なら1月分から通勤手当を貰えることになるかと思います。

      当該事案では本人としては損をすることになるのですが、逆を言えば場合によっ
      ては得をすることもあります。
      例えば1月3日に退職になる場合では、通勤手当は満額で支給されるので1月は1か月分丸々貰えるので、得をすることになります。

      厳密に通勤に要した交通費だけを正確に支給するということができれば良いですが、事務の煩雑さ等で出来ないのが現状で、このようなルールになっています。

  4. 高山 より:

    自宅から最寄り駅まで3.5キロのためバス通勤を申請しましたが、払い戻しを受けて自転車通勤をすることは不正受給でしょうか?
    雨の日は現金でバス利用という利用方法です。

    1. RH より:

      管理人のRHです。コメントありがとうございます。
      以下長文ですいません。

      基本的には申請した方法で過半数以上を通勤すれば、その方法(今回の場合はバス利用での交通費)で通勤手当は支給されます。

      しかし、雨の日はバス、それ以外の日は自転車で通勤とすると、バスでの通勤が過半数にならない可能性があります。その場合はバス通勤の申請は間違っている(自転車での申請が正しい)ことになります。場合によっては不正受給になってしまう可能性があります。

      また、バスにて過半数を少し超える回数分で出勤する等、バスでの通勤回数を調整して毎月出勤していると、毎月貰っている通勤手当と実際購入しているバス交通費に毎月差が生じて、得している状態を継続してしまうとそれも不正受給となる可能性があります。

      ※例えば、月で21日出勤するとして、11日をバス通勤とし、10日を自転車での通勤するように調整し、それを毎月繰り返すと不正受給になる可能性はあります。

      なお、基本的には月内でバスと自転車を折半若しくは割合で分けて通勤手当を受給するなどは許可されませんのでご注意ください。

コメントを残す

CAPTCHA